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Good Morning Yukon : Carmacks

 

 

2003年の7月、写真家・宮澤聡は初めてカナダのバンクーバーに降り立った。全長900km、16日間をかけて壮大なYukon Riverを下るために。

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 僕にとっては、Yukon川下り最後の朝を迎えた! 朝、コーヒーを飲みながら考えていた。今日で終わりだと思うとやっぱり寂しい。

 ただ、Seijiやヒロよりは、早くこのうざったい蚊の攻撃から解放されるのは、やはりうれしい! もう、う○こするときにお尻に虫除けスプレーを塗りたくることはない! このスプレー、強力でお尻が塗るたびにヒリヒリする。カヤックで一日中漕いでいるとお尻も痛くなってきてお尻の皮がむけそうになる、そんなところに、強力虫除けスプレーを塗るのだから、それはもう大変! 
ヒリヒリします!


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 そういう意味で、早く船を降りられるのはうれしい。もっとうれしいことがCarmacksには待っている! そこにはシャワーがあることです。約8日ぶりに体を綺麗にできる! いくら北極圏に近いところとはいえ、やはり真夏! 昼間は暑いのです! 真夏に8日間もシャワーを浴びないと顔は、脂ぎって日焼けで真っ黒、腕や足も真っ黒、髪の毛はやはり脂ぎってギトギトのタバタバ、僕たちを東京で見たら、ただのホームレスだ! そんな状態でシャワー浴びたらどんなに気持ちいいだろうか? 想像しただけで、興奮してくる!

 そんな想像をしながら、朝ご飯を済ませ、僕にとっての最後のYukonに出発! ここからCarmacksまで約40km、夕方までには着く計算だ。


th_Paddling Satoshi.jpg


 ここからの川下りは、隣にhighwayがCarmacksまで並走している。森や崖で見ることはできないが、たまに通る車の音が遠くに聞こえる。その車の音が、久々に聞いたからなのか、僕には車の音には聞こえないのだ。なんと例えていいのかわからないが、今まで聞いたことがない音。たとえば、UFOの音? ジェット機のエンジン音? ちょっと例えようがなかった。それをSeijiくんに、ほらほら! あの音? と尋ねると、そうか? おれには車の音にしか聞こえないぞ! と言う。ほら! また近づいてくる!シュオーーーーーーーーーーン!ヒュウーーーーーーーーーーーーーン!  なんか車と言うよりか、ジェットエンジンのような音に聞こえない? おまえ、耳おかしいだろ? おれは車にしか聞こえない! ただその時僕は、こいつなんでこの音が車と認識できるんだよ! おかしいだろ! 本当におれと同じ音聞いてるのか? と、疑いたくなるようなことだった。僕の耳に車の音が入ってくるのが、久々だったので、もちろん彼らも一緒だが、僕の脳は、車という認識ができなかったのだろうか?

 もしかすると、すでに僕の脳までが大自然用に切り替わっていたのかもしれない。


th_Second Camp in Teslin.jpg


 これは、東京に帰ってから、少しリハビリが必要なのかも知れない。カナダのWhitehorseに降り立ってからすでに2週間以上が経過していて、すでに体も心も大自然にあふれていた。すでに東京のことを少し忘れかけている気がした。

 人間の慣れとは、不思議なもので、東京やNYやどこでも大都会で生活しているときは、1日ぐらいならまだしも、2日も3日シャワーを浴びないとか、テント生活とかは、耐えられないと思っていたが、Yukonに来てからは、すぐに慣れてしまった! それしかチョイスがないからと言うこともあるが、もちろん、こちらでも、シャワーを浴びたり、屋根がある家にいることは、快適だと思う。でも、なくてもこの大自然の中ではやっていける気がした。大自然と言うものは、おそろしくも、美しく、危険もあるが人を魅了する。その中に、なるべく人工物を持ち込まず、少しの間だけでも、自然の営みに入って過ごすと人の心は、大自然でいっぱいになる! それが人間の慣れと言うものだと確信した。

 反対に都会で過ごしたときの人間の慣れは恐ろしいものがある! それが欲なのかもしれない。僕のような単純な人間はすぐ欲に揉まれてしまう。そんなことを気づかせてくれた旅だったように思えた。


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 そろそろCarmacksまで10km足らずとなった。僕の旅もそろそろ終着点である。そんなところに目の前に島が出てきてルートが2つに別れる。ヒロくんが島の左ルートに行こうとしていた。Seijiくんと僕は、右ルートから攻めることに。右ルートの方が幅が広かったが、案の定、ヒロくんはいつものごとく先行していたため、彼の独断と選考で彼は左ルートを行った。

 3分ぐらいして僕たちが島をぬけてもヒロくんの姿がない! あれ、あいつの方が早いハズなんだけどな~! 彼の姿がない。すると島から200mぐらい進んだところで後ろを振り返るとやっとヒロくんが島陰から現れた。

 僕たちがスピードを落として待っていると、やっと追いついたひろくんが、途中で浅瀬にに引っかかった~! 流木とか有って抜けるの大変だった! と。

 まあ、とりあえず抜けられて良かったじゃん! もう着くのにそこで抜けらけなかったらシャレにならんぞ! ここからは、三人ならんで行きましょう! もし、Carmacksで着岸できなかったら本当にシャレにならんぞ!

 彼らは、ここで食料や酒など補給できなければ、この先かなりしんどい旅になるからです! 僕の場合は、ここで止まれなければ、仕事までに日本に帰れないという事態に。

 いままでなら、最悪キャンプ地に着岸できなくても次のキャンプ地でよかったが、ここだけは、やり過ごすことはできない! 絶対に! 僕たちは、残り2kmとなってからは、スピードを落として進んだ。そして、隣のhighwayがはっきり見えてきた。そろそろここらへんだ!

 あった!!

 左の林の中にCarmacksのキャンプ場発見!ついでに船着き場まである! そして僕らは、無事に着岸!! ここで僕の壮大な川下りは、中途半端な形で終わることとなった! そして、岸を駆け上がり、林を抜けて空を見上げたとき......


 そこには、切れるような青空と白い雲が漂っていた!


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END OF VOLUME ONE


 このとき僕の中に、あるやりきれない思いが込み上げてきた。
 そして、ゴールに向けて出発した彼らを見送ったあと、僕はある決断をした!


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BEGINNING OF VOLUME TWO


2005年8月
 
 僕とSeijiは、Big salmon lake に立っていた! 

 後ろにあゆみとあつしさんが僕らのパッキングの様子をジーっと見ている。僕たちは、これから、また大自然の旅にでる。今回は、このBig salmon lakeからBig salmon riverを下り、Yukon riverに合流し、Doson cityまで16日間で下る。たぶん、タフな旅になるでしょう。それは、何回かここに来る前にあつしさんに止められたからです。難しい川であり水量も多いとのこと! しかし、僕たちは、ここを下る以外考えていませんでした。

 そして、僕たちは、あゆみとあつしさんに別れを告げ、勢いよくBig salmon lakeに漕ぎだした。しかし、僕たちの前には、すぐに僕たちの行く手を阻む邪魔者が姿を表すことになるとは、思わなかったのです。なぜかと言うと、そこには、相変わらず、切れた青空と白い雲が僕たちのことを祝福しているように見えたから!






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