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TOKYO CREATORS / 緒方誠一 Seiichi Ogata
Text by Ai Matsusaka
Photographs by Seiichi Ogata
元々ヘアメイクとして現場に出ていたという、〈D-CORD〉の緒方誠一。現在はエージェントの代表を務めているけれど、話を訊くと変わらずクリエイションを続けているように感じた。クリエイターのように作品を作るわけではないが、エージェントとしてどんな面白いことができるか?とアイデアを絞りだしているのだ。昔から「思いつくとすぐ行動」という性格だったそうで、その行動力には目を見張るものが。中でも今、形となって提示しているものがある。それがクリエイターの作品を発表する場である、『Direction』というウェブ・サイト。エージェントの限界を作ることなく、着実に新しい試みを始めており、クリエイターの場も広げつつあるのだ。彼自身が「面白いと思えば何でもあり」と言うように、何かに固執することなく、今後もエージェントの域を越えて、どんどん想像を越えたものを生み出してくれるに違いない。
「実際僕自身、ロンドンでヘアメイクをやっていて。もちろん、ヘアメイクで作品を作って日本に帰ってきたんですけど、日本のマーケットを考えていなかったので、全然受け入れてもらえなくて。ちょうどバブルの終わりかけの頃だったので、ちらし系のヘアメイクの仕事とかはたくさんあったんですけど、やりたいことができなかったんです。で、モデルのエージェントで、バイトをさせてもらう機会があって。そこはモデルのエージェントとレップもしていて『面白いな』と。しばらくしてスポンサーが出て来て、『そういうことをやってみる?』っていうことで、まず〈D-CORD〉じゃなく、別の形で出発したんです。外人のモデルのエージェントとレップ、キャスティングの会社が3つくっついてはじめたんですよ。それから1年半後にバブルが終わって、スポンサーの会社も飛び(笑)。だから、僕が集めていた人達と、レップという形で純粋に〈D-CORD〉を立ち上げたんです」。
頭の中では理解していても、度胸なしで行動することはできない。彼がロンドンに行ったきっかけも、行動力があったからこそ。淡々と話を進めるが、決して並大抵の努力でできることではないように思う。
「始めはファッションの方に興味があったので、ファッションの専門学校に進んだんです。でも、卒業する頃には、自然とヘアメイクの勉強をしたくなっていて、『どうせやるなら海外だ』と思って、ロンドンに行ったんですよ。ヘアメイクの知識は全くゼロだったんですけど(笑)、ほとんど思いつきで。ロンドンに行ったら、頭の中の硬い部分をカチ割られましたね。日本だと、マニュアルの中でやっていく部分があるじゃないですか。もちろん、基本は大切なんですけど、ロンドンには『もっと自由にクリエイションして良いんだよ』という感覚があって。しかも、僕がいた時代は'86年ぐらいで、カルチャー的にも面白かった時代で。すごく刺激を受けましたね。結果的には現場に向いてないのかもしれないというのもあり、方向転換をしたんですけど」。
〈D-CORD〉には、人のみならず、スケボー犬のBAZOOKAも所属。彼がここまで幅広くマネージメントをする理由とは?
「マネージメントができるものに関しては、基本的に何でもやりたいんです。良い出会いがあれば、モデルでもミュージシャンでも良いですし。新しい分野に挑戦するのが好きなんですよね。好奇心は多いです。それに今の時代、1つの集合体で色々と発信できるようになっているじゃないですか。うちも実験的に皆の作品を集めて、『Direction』というウェブ・サイトで発信しているんです。新しい場を広げるのも、エージェントの役目なのかな? と。もっと色々な個性が集まれば、様々なことができるんじゃないかな? とも思っています。将来的には、いろんなタイプの映像ディレクターがいても良いですし。前は映画を1本撮るのに、莫大なお金とスタッフが必要でしたけど、もうコンパクトにできますから。今は実現可能かもしれないんですけど、昔から映画をつくれればなと夢として持っていたんです。死ぬまでに、映画1本撮れるぐらいのスタッフが集まっていると面白いなと。時代的に届きそうな感じですよね。映画5本ぐらい作れそうかな?と考えています(笑)」。
※『Barfout!』NOVEMBER 2011 VOLUME 194より転載