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Favela Vidigal
若原瑞昌 Mizuaki Wakahara
Photographs, Collages & text by Mizuaki Wakahara
現地を何度も訪れドキュメントを続ける写真家・若原瑞昌が、映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台にもなったファヴェーラ(=貧民街)、Vidigalをテーマに、コラージュと詩を制作。世界で最も美しい眺めのスラムには、絶望が染み込みこんでいる……。
ギャングと話す経験は、とても稀有な出来事だ
リオデジャネイロのVidigalの丘にそびえたつこのファベーラからは
コパカバーナやイパネマを見降ろすことができる
正に天国と地獄が入れ換わったように配置された奇妙な風景
世界で最も美しい眺めのスラムと呼ばれるここVidigalで
ギャングとして生きる男たちと出逢う
絶望が染み込んだこのファベーラに、彼らは生まれた
銃声を聴きながら育ち、毎日仲間が死んでいく
物心ついたころには、銃の扱いだって知っている
そしてある日、決断の日が訪れる
飢える
か、それとも銃を手にするか
死ぬか、 生きるか
殺るか、 殺られるか
ブタ箱か、 棺桶か
ファベーラの掟に忠実に振る舞ったつもりだったが
わたしの存在そのものがここの法に触れた
彼らはわたしの額にライフルの尖端を押しつける
あとは脳ミソをぶっ飛ばすだけだ
わたしは静かに目を閉じた
2016年にオリンピックを控えるブラジルは現在、ファベーラ撤去計画を急速に進めている。映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台にもなったこのVidigalも様々な利害が重なりあった結果、昨年の暮れに大規模な摘発があり、壮絶な銃撃戦の末、今は警察局の統治下に治まり、もはやファベーラとして存在していない。