TOP / DIRECTION'S EYE / RESCUED DOGS
毎年およそ8万匹の犬が処分という名で殺されている。
日に換算すると、7匹。4時間に一匹ずつ命を奪われている。
これはいったいどういうことだろう?
捨てられた犬達は、なぜ捨てられてしまったのか?
それは個々の元飼い主に言い分を聞くしかないのだが、
そんな理由で? と耳を疑いたくなることが実際は多い。
イメージと違ったから。
もう10年も面倒を見たから。
相性が悪かったから。
芸ができないから。
バカだから。
無駄吠えをするから。
子供が生まれたから。
そういう理由で人間は犬を処分してもらおうと保護センターに持ち込む。
彼らは見た目は普通の人たちで、けっして残酷な顔をしているわけではない。
幼い子供の手を引いて一緒に捨てに来る人もいる。
穏やかな微笑みを浮かべたおばあさんや、知的な紳士然とした人も。
犬を捨てること。
彼らにとって、それはごく当たり前のことになってしまっている。
使い古した洋服や、家電を捨てるのと同じことなのだろう。
だからといって、彼らが命の重みを知らないわけではないだろう。
肉親兄弟、恋人友人が死ねば、悲しむだろう。
きっと、これは個人だけの問題ではなくて、
犬を捨ててしまえる社会のどこかに原因があるのだろう。
本来は、その根の部分を探っていくのが一番大切なのだが、
こうしている間にも犬が処分されている。
まずはできることからと思い立ち、保護センターから犬を引き取り、
新たな里親が見つかるまで常時50匹近くの保護犬をたった二人
で面倒をみている神奈川ドックプロテクションの活動を
サポートさせていただくために、そこの保護犬をモデルとした
カレンダーを作りました。
もうこの世にいなかったはずの一匹一匹の今日を生きる姿を見
ると、涙が出ます。信頼していたはずの親同然の飼い主から見捨て
られても、彼らは生きたいのだと、実感する撮影でした。
写真は、ただ単に個人の表現欲を満たすだけのものではないのだとも。
彼らの姿を見ていると、私達は決して無力なのではなく、ただ
微力なだけなのだと励まされます。
その力が合わさって大きく成長することを願います。
藤代冥砂